こんにちは。
銀座のパーソナルトレーニングスタジオ「フィジカルラボ銀座」です。
暑い時期の運動後に飲むドリンクは格別の美味しさですよね。
乾いた身体に染み渡る水分で生き返る気分になります。
ただ、ドリンクの種類によっては水分を摂取しても『生き返る気分』になるだけで、効果的な水分摂取が出来ていない=実際に身体に水分が補給されていないということも起こりえるため注意が必要です。
そしてその結果脱水状態が引き起こされると、熱中症のリスクが上がるだけでなく、認知機能の低下に繋がり(2)、勉強や仕事の効率が落ちてしまう可能性もあります。
近年のような酷暑下においては、運動後だけに限らず、通勤通学や外回り中の発汗によっても陥る可能性がありますので、身近な問題として念頭に置いていただきたいなと思います。
そこで本日は、効果的な水分補給に適した飲料についてまとめたレビュー論文を元に、おすすめの飲み物を紹介していきます!
Optimizing the restoration and maintenance of fluid balance after exercise-induced dehydration
Evans et al., (2017)(1)
まず飲料の「浸透圧」というものが重要です。
浸透圧とは、2つの濃度が異なる液体が半透膜を介して隣り合った時に、濃度を一定に保とうとして水分が濃度の薄い側から濃い側に移動する圧力のことです。
浸透圧は飲料に含まれるミネラルの濃度などで決まるのですが、身体の浸透圧と同じくらいの飲料をアイソトニック飲料、身体の浸透圧よりも低い飲料をハイポトニック飲料と言います。
水は浸透圧が低いハイポトニック飲料にあたります。
一時的に身体に水分を吸収させることだけを考えると水のようなハイポトニック飲料で良いのですが、それだと以下の通り、身体は脱水前の状態には戻りません。
まず、汗をかくことで体内の浸透圧が上昇します。汗にはナトリウムなどのミネラルも含まれていますが、それを失う以上に水分が出ていき、体内のナトリウムなどの濃度が高くなるためです。
するとアルギニンバソプレッシンという物質がリリースされ、
✓喉の渇きの発生
✓尿量の低下
につながります。
つまり水分摂取を促し、水分の放出を抑える方向に身体が反応するわけですね。
ところがそこで真水のような浸透圧の低い飲料を飲んでしまうと、体内の浸透圧が正常より低くなり、アルギニンバソプレッシンの量は低下します。これにより先ほどとは逆の現象
✓喉の渇きの抑制
✓尿量の増加
に繋がります。
つまり、身体が水分を入れずに出す方向の反応をするわけですね。
この時点では喉の渇き自体はなくなっていますが、水分は出ていく方向に働いてしまいます。
これが冒頭の『生き返る気分』になっているだけで、効果的な水分摂取が出来ていないという状態ですね。
運動後や大量の汗をかいた後の水分摂取は、とにかく体内の浸透圧の低下を引き起こさないことがポイントになります。
その点に関して、Evansら(2017)のレビューでは
✓ナトリウム
✓カリウム
✓糖質
✓タンパク質
が含まれている飲料は、体内の浸透圧の低下や尿量の増加に繋がりづらいと述べられています。
ナトリウム、カリウム、糖質が含まれている飲料の代表的なものとしてまず挙げられるのはスポーツドリンクですよね。
スポーツドリンクは真水に比べて身体の浸透圧の低下を引き起こさず、体内にしっかりと水分を保持できるようです。
そして意外なことに、そのスポーツドリンクを上回る吸収効率を見せたのが『牛乳』です。
牛乳には上記のナトリウム、カリウム、糖質、タンパク質がすべて含まれており、スポーツドリンクよりも水分の吸収量(尿になりづらさ)が大きかったことが報告されているようです。
牛乳の消費量が減っていると言われていますが、思わぬ優れたポイントの再発見ですね。是非この夏の運動後には、冷たい牛乳で効果的な水分補給をしてみてはいかがでしょうか?
なお、今回の情報はあくまでも『運動後』の水分摂取についてです。『運動中』の場合はまた考え方が変わってきますのでご注意ください!
©Physicl lab Co.,Ltd. 2023
参考文献
- Evans, GH, James, LJ, Shirreffs, SM, and Maughan, RJ. Optimizing the restoration and maintenance of fluid balance after exercise-induced dehydration. J Appl Physiol 122: 945–951, 2017.
- Suhr, JA, Patterson, SM, Austin, AW, and Heffner, KL. The relation of hydration status to declarative memory and working memory in older adults. J Nutr Heal Aging 14: 840–843, 2010.
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