5月も近づいてきて、暖かさからか日中の眠気が増してきた方も多いのではないでしょうか?
もしくはその眠気は、睡眠時間の不足からきているのかもしれません。
一般のかたの適切な睡眠時間は7~8時間だと言われていますが、多くの人はこの時間を確保できいないのではないでしょうか?
しかしながら睡眠時間は長ければ長いほど良いというわけではありません。
本日は、睡眠時間と病気の関係についての研究をご紹介します。
F.P.Cappuccio et al (2011)
Sleep duration predicts cardiovascular outcomes: a systematic review and meta-analysis of prospective studies
【研究デザイン】
睡眠時間と疾患(冠動脈疾患、循環器疾患、脳卒中)との関係について調査した研究をデータベースから抽出し、メタアナリシスという方法でそれらの研究結果から統合的な結論を出す。
●抽出する研究の内容
通常の睡眠時間をとっている人々と、長いor短い睡眠時間の人々を数年かけて追跡調査を行い、疾患の発症率を比べた研究
●抽出された研究数
15個(総被験者数47万4684人)
・追跡期間
6.9~25年
【結果】
1万6067件の疾患の悪化orそれによる死亡
・冠動脈疾患:4169件
・脳卒中 :3478件
・循環器疾患:8640件
短時間睡眠の人の発生率、長時間睡眠の人の発生率を、7~8時間睡眠の人の発生率と比較して、相対危険度(何倍発症しやすいか)を算出
【この研究から分かること】
睡眠時間が短くても、長すぎても病気にかかるリスクは増大する
睡眠時間が短い場合、脂肪の合成を促進するホルモンが増加することや、糖質代謝がうまくできないことから肥満につながると言われています。
慢性的な睡眠不足はそうしたメカニズムからメタボリックシンドロームを始めとする生活習慣病の発症、さらに悪化すれば今回の研究のように死亡率の増加にもつながると考えられます。
長時間睡眠はどのようなメカニズムで疾患につながるかはあまり分かっておらず、長時間睡眠それ自体が悪いというよりは、身体活動の少なさ、他の精神疾患、失業など、長時間睡眠とも関係があるリスクファクターが今回研究対象になっていた疾患にも影響を及ぼしたと考えられます。(本研究での被験者は一般の方々だったので、アスリートだと適切な睡眠時間は変わってくる可能性もあります。)
また、あまりに激しい運動を行いすぎても、まったく行わなくても免疫機能が低下すると言われていますし、栄養も過剰だとメタボリックシンドロームなどの生活習慣病に、栄養の不足が骨粗鬆症やロコモティブシンドロームにもつながります。
運動にしろ、睡眠にしろ、食事にしろ、不足も過剰も身体には良くないということですね。
文責:佐々部孝紀
参考文献
Sleep duration predicts cardiovascular outcomes: a systematic review and meta-analysis of prospective studies
Francesco P. Cappuccio, Daniel Cooper1, Lanfranco D’Elia, Pasquale Strazzullo, and Michelle A. Miller
European Heart Journal (2011) 32, 1484–1492