4月に入り、少しずつ寒さが和らいできました。
桜もきれいな時期ですし、天気が良い日は外を散歩するのも気持ちよさそうですよね。
さて、散歩というのは「歩行」という動作でもあるのですが、
実はこの「歩行」、我々の健康と密接な関りがあるのをご存知ですか。。?
本日は「歩行速度」と「寿命」の関わりについて調査した研究をご紹介します。
Gait Speed and Survival in Older Adults
Stephanie Studenski et al, 2011
【研究デザイン】
●概要
1986~2000年までの間に発表された
高齢者の歩行速度と寿命に関する研究を抽出(抽出方法は論文を参照)
抽出された研究は9つ
被検者総数34,485人
それらの研究の結果を統合し
歩行速度・年齢別の
・5年後生存率
・10年後生存率
を算出
●カテゴリ分け
年齢
・65~74歳
・75~84歳
・84歳~
の3つのpグループ
歩行速度(秒速)
~0.4m/s
0.4m/s~0.6m/s
0.6m/s~0.8m/s
0.8m/s~1.0m/s
1.0m/s~1.2m/s
1.2m/s~1.4m/s
1.4m/s~
※歩行速度は普段の生活通りのスピードで
※時速3㎞が0.83m/s、時速4㎞が1.1m/s
【結果】
年齢、性別、歩行速度別、5年後生存率
歩行速度(m/s) | 男性 | 女性 | ||||
65~74歳 | 75~84歳 | 84歳~ | 65~74歳 | 75~84歳 | 84歳~ | |
~0.4 | 68%(47~82) | 60%(38~76) | 25%(15~36) | 80%(71~86) | 69%(58~78) | 47%(40~64) |
0.4~0.6 | 77%(72~81) | 57%(49~64) | 31%(24~39) | 88%(85~90) | 75%(68~80) | 61%(50~70) |
0.6~0.8 | 79%(74~83) | 65%(57~71) | 49%(35~61) | 91%(89~93) | 82%(78~86) | 74%(69~78) |
0.8~1.0 | 86%(82~88) | 75%(69~79) | 54%(43~64) | 93%(91~96) | 89%(86~91) | 73%(59~83) |
1.0~1.2 | 90%(86~93) | 83%(76~87) | 68%(57~77) | 96%(94~98) | 91%(87~94) | 61%(35~79) |
1.2~1.4 | 93%(86~97) | 85%(79~89) | 62%(46~74) | 96%(94~97) | 93%(87~96) | 被検者不足 |
1.4~ | 96%(82~91) | 93%(86~96) | 91%(51~99) | 97%(94~99) | 95%(72~99) | 64%(58~70) |
※数値は5年後生存率、( )内の数値は95%信頼区間 |
(10年後生存率は論文を参照)
【この研究から分かること】
健康や長生きのためには、運動・トレーニング
歩行速度が速い人ほど長生きであるという結果が分かりました。
なおかつ、この研究は複数の研究結果を統合したもの(被験者数も3万人超え)なので、かなり信頼できるデータです。
著者は論文内の考察で、歩行速度が寿命と関連している理由について以下のように述べています。
歩行というのは
・エネルギー
・運動制御
・バランス
・身体の各器官(心肺、神経、骨格筋)の機能
を必要とするため、スムーズに歩行ができる
↓
・身体の各機能がしっかりとしている
・身体活動量も増えるその結果健康・寿命にに影響を与えたと考えられる。
この歩行速度というのは、病院に行く、治療院に行く、薬を飲む、では改善できませんよね。
当たり前のことですが、健康のためには運動は不可欠です。
その重要性を再認識できるデータでしたね。
ただ、急にやみくもに歩くだけだと、その負担で膝などの痛みにつながる恐れもあります。
まずは自分の身体の状態を知ること、そして適切なトレーニングも歩行やジョギングと平行して行うことが、一生涯の健康につながります。
新年度、心新たに運動習慣を身につけてみませんか?
文責:佐々部孝紀
参考文献
Stephanie Studenski et al, 2011
Gait Speed and Survival in Older Adults
JAMA, January 5, 2011—Vol 305, No. 1, 50-58