ランニング
それは靴さえあれば誰でも始められる、手軽な運動の代表ですよね。
ただ、普段激しい運動をあまり行わない一般(非アスリート)の人は、急に走り始めたりなんかしたら怪我が心配。。なんてこともあると思います。
今日は一般の人において、どのような特徴を持った人がランニングにおいて怪我をしやすいか?という研究です。
V. Lun et al, 2003
Relation between running injury and static lower limb alignment in recreational runners.
【研究デザイン】
被験者:レクリエーションレベルのランナー153名
(男性82名、女性71名)
現在怪我を抱えていない
18歳以上
週20㎞以上のランニングを行っている
週4日以上他のスポーツを行っている被験者は除外
アライメントの測定:
身長、体重、膝の内反角、過伸展角度
脚長、Qアングル、股関節内旋・外旋ROM
足関節底屈・背屈ROM、前足部・後足部外反角
アーチ高から偏平足、ハイアーチかを評価
調査期間:6か月
調査期間中は、シューズ、走行距離・時間、天気、地面のタイプ
等を記録
傷害(怪我)によりランニングを制限、中止した場合は以下のように分類
R1・・・1日の制限
R2・・・2日~1週間の制限
R3・・・1週間以上の制限
S1・・・1日の中止
S2・・・2日~1週間の中止
S3・・・1週間以上の中止
【結果】
●傷害発生件数
調査結果を最後まで収集できた被験者は87名(男性44名、女性43名)
傷害によりランニングを制限・中止した被験者は69名(全体の79%)
傷害によりランニングを完全に中止した被験者はそのうち17名
傷害が発生しなかった被験者は18名(全体の21%)
●傷害発生部位
【全体】
足部・・・15%
大腿・・・9%
下腿・・・9%
【男性】
下腿・・・13%
股関節・・10%
【女性】
足部・・・15%
下腿・・・9%
●傷害が新規のものか再発のものか?
新規・・・49%
再発・・・29%
●アライメントと傷害の関係
傷害が発生した群と、傷害が発生しなかった群で
各アライメント(膝の外反角、股関節の可動域等)の平均値を比較したが
有意な差は見られなかった。
(女性に限定した場合、左の後足部内反にのみ有意差が認められた)
一方、膝蓋大腿関節の障害においては足関節底屈ROM、膝過伸展、前足部内反との関係が示唆された(同側か対側かの記述なし)
【この研究からわかること】
アスリートレベルでなくともランニングの怪我は多い
今回の被験者は週に20㎞以上走っているという条件で集められましたが、
平均の走行距離は週あたり約35㎞でした。
これがどのくらいかというと、
毎日走るとしたら1日当たり5㎞
ジョギングを毎日約1時間といったところでしょうか。
けっこうな量ですよね。
そして驚くべきことに、半年の間に約8割の被験者が何らかの痛みによりランニングを一時的に(一部は完全に)中止していたということ。
冒頭でも述べた通りランニングというのは非常に簡単な運動。
しかもこの研究の被験者達は他のスポーツはあまり行っていない人々。
簡単な動作ということは、裏を返せば同じところに繰り返しのストレスがかかるということ。
その結果がこの怪我の多さなのかもしれませんね。
単純に関節の可動域、アライメントだけでは怪我を特定できない
今回の研究の結果、ランニングで発生する傷害と、関節の可動域(身体の固さ)やアライメント(骨格の形態)との関係性は見出されませんでした。
それには次の理由が考えられます。
・動きの不良が傷害につながる可能性がある。しかし関節の可動域や静止姿勢のアライメントは傷害の発生に対しては(動きの不良を通して)間接的にしか作用しないのでは。
・そもそも今回は「ランニング行っている期間に発生する傷害」についての調査なので、「特定の傷害」についての調査ではないため、特定の可動域やアライメントも抽出されなかった。
健康的にランニングを楽しむためには、
・無理のない距離・ペースで行う
・他にもいろんな種類の運動を取り入れてみる
・身体に違和感を感じたら定期的に専門家に評価してもらう
等が必要?
今回の研究から推測できることです。
どんな運動でも、それが単純なランニングであっても、一度は専門家に相談してみたほうが安心かもしれませんね!
V Lun, W H Meeuwisse, P Stergiou, D Stefanshyn
Relation between running injury and static lower limb alignment in recreational runners.
Br J Sports Med, 2004, 38:576-580