『身体のケアやウォーミングアップといえばストレッチ』といったイメージを持っている方も多いかと思います。
しかしストレッチは実施直後の筋力を低下させてしまうといった報告や(1)、筋肉痛などに対する予防・改善効果が薄いといった報告もなされており(2)、過去に思われてきたほど万能ではないということも分かってきています。
近年、ストレッチと並ぶメジャーなアプローチとして、『フォームローリング』が広まってきています。
これはフォームローラーといわれる筒状の道具に体重をかけ、筋肉に圧を加えてほぐしていくという方法です。
『筋肉をほぐす』というイメージなのでストレッチと同じようなものと捉えられるかもしれませんが、フォームローリングでは筋肉に対して垂直に近い圧が加わり、ストレッチは筋肉に引き伸ばすようなストレスを加えるので、加わる刺激は別物になります。
可動域の向上、筋肉痛などの予防、パフォーマンスアップ、怪我の予防など、ストレッチに期待されている効果は複数あると考えられますが、今回は『可動域の向上』について、フォームローリングとストレッチの効果を比較した研究を紹介致します。
Instagramではイラストを用いて、分かりやすく説明しています。
下記にスクロールしていただくと更に詳しく内容を説明していますので、気になる方はそちらもご覧ください!
フォームローリングvsストレッチ
Acute Effects of Foam Rolling on Range of Motion in Healthy Adults:
A Systematic Review with Multilevel Meta‑analysis
Wilk et al., 2020(3)
研究方法
2019年5月までに発表された以下の条件に当てはまる研究を抽出し、メタ解析を行った
・健康な大人が対象
・英語、ドイツ語で書かれたピアレビュー
・RCT、Cross Overの介入研究
・フォームローリングとストレッチor介入なしとの効果の比較
結果
※ROM:Range of Motion(関節可動域)
フォームローリングとストレッチには有意な可動域向上の効果の差は認められませんでした。
一方で短時間(90秒未満)の介入に限定すると、ストレッチのほうが有意に可動域を向上させたことが明らかになりました。
この研究から分かること
しっかりと時間をかけて実施をする場合、フォームローリングとストレッチには可動域向上に対する効果の差は認められませんでした。
一方、短時間(90秒未満)に限定した比較では、ストレッチのほうが大きな効果が認められました。
また、先述した通り静的なストレッチは運動前に実施すると直後の筋出力を低下させることが明らかになっていますが(1)、実施時間が短い場合はそのネガティブな効果も少ないことが報告されています。
それらを総合的に考えると、運動前のウォームアップとしては
- 身体が固まっていて、時間をかけてしっかりとほぐしたいとき⇒フォームローリング
- あまり時間をかけずに短時間で身体をほぐしたいとき⇒ストレッチ
といった使い分けが良いのではないでしょうか。
自分の身体の声を聞きながら、その時その時に適したアプローチをとっていきましょう!
©Physicl lab Co.,Ltd. 2022
参考文献
- Simic, L, Sarabon, N, and Markovic, G. Does pre-exercise static stretching inhibit maximal muscular performance? A meta-analytical review. Scand J Med Sci Sport 23: 131–148, 2013.
- Torres, R, Ribeiro, F, Alberto Duarte, J, and Cabri, JMH. Evidence of the physiotherapeutic interventions used currently after exercise-induced muscle damage: Systematic review and meta-analysis. Phys Ther Sport 13: 101–114, 2012.Available from: http://dx.doi.org/10.1016/j.ptsp.2011.07.005
- Wilke, J, Müller, AL, Giesche, F, Power, G, Ahmedi, H, and Behm, DG. Acute Effects of Foam Rolling on Range of Motion in Healthy Adults: A Systematic Review with Multilevel Meta-analysis. Sport Med 50: 387–402, 2020.Available from: https://doi.org/10.1007/s40279-019-01205-7
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