暑さに適応したカラダにするために

日中の最高気温が30度以上になる地点も現れ始め、熱中症のリスクが高まりやすくなってきました。

また、暑さにより生じてしまうことは熱中症だけでなく、脳が疲労してしまい、判断力が低下する、集中できない、筋力が低下するといったことが生じる

可能性がある為、以上のことを予防するためにも暑さ対策は重要です。

そのため今回のブログでは、体温の基礎から暑熱順化についてお話します。

体温について

体温を測る際に脇の下や口の中などで何度かを確認すると思いますが、測定部位によって体温は少しずつ異なります。

一般的には、身体の内部は温度が高く、外部は温度が低くなっているので、身体の外側を「殻(shell)」、身体の内側を「芯(core)」と二つに分けて表現することがあり、

芯の部分は環境が変わっても概ね37℃で変わりにくく、殻の部分は環境によって温度が変わるようになっています。

芯と核

 

ですが、体温が異常に上昇したり、低下したりして体温調節機能に障害を受けると、

循環器系や中枢神経系に機能不全が起こり生命の危険に陥る為、環境によって体温を調節することが重要です。

体温調節について

体温調節を大きく二つに分けると、体温を上げるための「熱産生」と体温を下げるための「熱放散」に分けられ、

熱の移動は、伝導対流輻射蒸発の4つの方法に分けられます。

伝導とは隣り合う組織を伝わっていく現象をいい、冷たい物に触れて身体の熱がその物体に伝わって失われることなどが例としてあげられます。

対流とは気体や液体の作用による熱移動のことであり、風が身体にあたることで熱が下がることなどをいいます。

輻射とは身体の表面や物体からは絶えず熱が放射されており、冷たい壁に面していると、気温と体温が同じ場合でも体温が下がるといった現象のことをいいます。

伝導や対流、輻射は熱産生と熱放散どちらにも関与していますが、蒸発は熱放散にのみ作用し、汗が蒸発する際に皮膚が冷却される現象などのことをいいます。

暑熱環境下や運動を行ったりすると汗が出てきますが、汗が熱放散全体に寄与する割合は、安静時では20%、運動時では80%にまで達します。

さらに発汗機能を良くすることや暑さに身体を適応するためには「暑熱順化」というものが重要になりますので、次に暑熱順化についてお話します。

暑熱順化

暑熱順化とは暑さに対して身体が徐々に適応していくことをいい、身体に起こる反応としては、心拍数や汗に含まれるナトリウムが減少する、

発汗量が増えて体温を下げやすくするといったことなどがあげられ、より効率良く体温調節をすることができるようになり、運動を長く続けられることや

熱疲労によるパフォーマンス低下、熱中症のリスクなどを低減することが期待できます。

暑熱順化グラフ

 

上図は暑熱順化による適応までの期間を表していますが、概ね4~7日で心拍数の低下や運動能力の向上、発汗速度の促進などの効果が表れていることがわかります。

暑熱順化する前の身体と暑熱順化した身体ではパフォーマンスに大きな差が出てきそうですよね。

それでは、どのように暑さに適応するのがいいのでしょうか?

日本スポーツ協会が出している「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」では以下のようにポイントをまとめています。

 

①開始時期

  • 気温が高くなり始める5~6月から開始する
  • 暑熱環境地域に移動して競技会に参加する場合は、5日間以上前に現地に入り、トレーニングを行う

②暑熱順化に必要な期間および持続性

  • トレーニング開始から順化の効果が表れるまで5日間を要する
  • トレーニングを中止した場合、短い場合は1週間、長くても1か月でその効果は消失する
  • 順化のためのトレーニングは3日間以上間をあけない

③トレーニングの強度、時間、服装など

  • 最大酸素摂取量の50~75%の強度の運動を30~100分実施する

(環境条件や個々の体力を考えて実施する)

  • 強度および運動継続時間は、順化が進むにつれて漸増する
  • 服装は汗の蒸発を妨げない服装が好ましい

④その他

  • 非暑熱下でのトレーニングや暑熱環境暴露のどちらかだけでは効果が小さい
  • 順化トレーニングにより発汗量は増加するため、より多くの水分を補給することが必要である

 

最大酸素摂取量の50~75%ってどのくらい?と思う方もいらっしゃると思いますが、正確に知るためには特別な機材が必要となります。

その為、実際にどのように行動したらいいかを次にお伝えします。

暑熱順化の具体例

まず、運動強度を知る簡易的な方法を2つ紹介します。

1つは心拍数を用いた方法です。運動中の心拍数は運動強度と深い関係にある為、年齢に応じた最大心拍数「220-年齢」の50~75%の心拍数になる強度で運動します。

例えば30歳の方は、220-30(年齢)=190(最大心拍数)となり、190×50%~190×75%なので、運動中の心拍数が95~142.5となるようにします。

もう1つの方法は主観的運動負担を数字で表したもので、以下のボルグスケールが代表的です。

ボルグスケール

 

数字を10倍するとほぼ心拍数になるように工夫されていますが年齢などにより差異があるので注意が必要ですが、

先ほどの30歳の方を例に挙げると心拍数が95~142.5の範囲になるように合わせるため、ボルグスケールで見ると10~14、

感覚で表せば、楽である~ややきついと感じる程度での運動強度が最大酸素摂取量の50~75%にあてはまると思います。

以上のような測定方法を参考に運動強度を決め、30~100分運動するようにしましょう。

また、その他のところに記載してある「非暑熱下」とは早朝のあまり太陽が昇っていないときや夕方以降の日差しが弱いときなどをさし、

「暑熱環境暴露だけ」というのは暑熱環境下にいるだけで運動をしていないことを意味していると思われます。

なるべく日差しが強いタイミングで運動することが効果的に暑熱順化ができそうです。

 

現在は新型コロナウイルスの影響で運動中もマスクを着用することが多くなると思いますが、熱中症のリスクが高まる為、

周囲に人がいない場合はマスクを外す、のどが渇く前に水分を補給するなどといった注意をしながら、暑さに適応できる身体をつくっていきましょう。

 

参考文献

  1. 貴邑冨久子 他.シンプル生理学.改訂第7版.南江堂.2016,361p
  2. 公益財団法人日本スポーツ協会,https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/heatstroke/heatstroke_0531.pdf
  3. Leon, Lisa R., and Robert Kenefick. Pathophysiology of heat-related illnesses. No. USARIEM-MISC-10-37. ARMY RESEARCH INST OF ENVIRONMENTAL MEDICINE NATICK MA THERMAL AND MOUNTAIN MEDICINE DIVISION, 2012.
  4. Périard, J. D., Sebastien Racinais, and Michael N. Sawka. “Adaptations and mechanisms of human heat acclimation: applications for competitive athletes and sports.” Scandinavian journal of medicine & science in sports 25 (2015): 20-38.